約 30,447 件
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/1680.html
幻想郷にて:博麗霊夢によるある事実の確認 「――――ふわ」 あー眠い。眠いったらありゃしないわー。 ここ最近妖怪の山を登ったり降りたりしてるからロクに寝れてないのよね、まったく……… おかげでデスティニーに家事まかせっきりになっちゃう。まあこの一件が無くても任せてるけど。使えるものは使わなきゃ。 にしたって、山の連中よ。こういう時は新入りから私の方にあいさつに来るべきじゃないかしら。 大体何なのよあの緑、脇なんか出しちゃって。著作権侵害で訴えてやろうかしら、そうすれば賠償金でがっぽがぽだし一石二鳥ね。 「済まないが霊夢、欠伸を見せつけに来るだけなら帰ってくれないか、僕もそう暇じゃあない」 そう言いながら追い出そうとはしないのよね、霖之助さんは。 魔理沙にもだけど、ホントそう言うところは甘いと思う。 「暇じゃないって言うけど、私ここが忙しそうなところ見たこと無いわよ」 「君が見ていない時に忙しいんだよ。と言うか、暇を見計らって顔を出してくる人の言う台詞じゃないな」 聞こえなーい聞こえなーい。 ま、とはいえこのままじゃ本当に追い出されかねないわね、いくら甘いとは言っても一度追い出すって決めたらホントに追い出しちゃうから霖之助さんは。 何か話題を変えて………あ、そうだ。 「ねえ霖之助さん、魔理沙のことなんだけど」 あ、何か止まった。霖之助さんにしては珍しいわね、とはいえ、食いついてくれたみたい。 「………コホン。魔理沙が、どうかしたのかい?」 「いやー、思いっきり恋してますって顔よねー。霖之助さん的にはどうなのかなーって」 そう、恋。まあ誰に、なんて言うだけ野暮だとは思うけどあの外どころか違う世界から来たあのシン・アスカに。 趣味悪いわーってのが私の感想。正直私としてはあれのどこがいいのかさっぱり分からないんだけれど。 とは言っても魔理沙があれがいいって言うんなら個人の趣味にとやかく言うつもりはないわ、首突っ込んでも面倒臭いだけだし。 「むぅ………まあ、魔理沙が決めたのなら応援するさ、これでもあの子の兄貴分なつもりだからね」 「ふぅん? てっきり「私が香霖のお嫁さんになってやるZE」って言われたがってるとばかり」 「どうしてそこで茶化すかな君は。そりゃあとんでもない碌でなしなら何が何でも止めただろうけど、シン君ならさほど問題はなさそうじゃないか」 まぁねー。悪人面してるくせに基本まっすぐでお人好しだしねアイツ、似合ってないったらありゃしない。 ああ、そう考えると単純馬鹿でヘタレの魔理沙にはお似合いってことかしら? 「何かひどいこと考えていないかい?」 「別にー。でも霖之助さん、もしもシンが魔理沙を泣かせたりしたらどうするの?」 「ん、別にどうもしないよ」 ………まあ、そう言う人よね、分かってたことだけど。というかそれでこそ霖之助さん。 そんなこと考えてたら溜め息つかれちゃった。 「何か勘違いしているみたいだから言っておくけど、恋愛沙汰で泣くことなんてそう珍しいことじゃないだろう。余所様が一々口を出したりしたらそれこそ馬に蹴られるよ」 「ふぅん………じゃあもし泣かして放置してたら?」 「その時には草薙の剣の封印を解かざるを得ないね」 あ、目がマジだ。というかそんなもの振り回したら被害はシンだけでは済まないでしょうに。 なんだかんだでシスコンよね霖之助さんって。いい加減妹離れすればいいのに。 「何か言ったかい?」 「ううん別に?」 何も言ってないわよ、藪をつついて蛇出す趣味はないし。 に、しても………なんかこっそりと見たことないお酒が増えてるわね、しかも高そうだし。 「それ、霖之助さんが一人で飲むの? 晩酌なら付き合いましょうか?」 「君が呑みたいだけだろう………遠慮しておくよ、白玉楼の友人からの貰いものだしね」 ああ、そういえば白玉楼にも外からの人間が来てるんだっけ。 人間って言うよりは亡霊だか幽霊だか、まあ有体に言えば霊よねレイ。 というか。 「霖之助さん友達いたんだ」 「そういう君は魔理沙以外に友達がいるのかい?」 答えるのも癪だし肩だけすくめておこっと、霖之助さんも大概いなさそうだし。 友達かぁ。特にはいないけど、まあ不便したことはないわね。 魔理沙ともいい加減縁切ってもいいんだけど、ずるずる腐れ縁を続けちゃってるし………どうしたものかしら。 「まったく………相変わらず浮世離れしているんだか俗世に染まってるんだから分からないな、君は」 「あら、よく見てるじゃない」 「見たくて見てるわけじゃないけれどね」 間。何かまた間があいちゃった。こういうのも好きだけど、だからってこのままほっぽっておくと霖之助さんの気分次第で追い出されそうなのよね。 どうしたものかしら………しょうがない、また魔理沙で何か引っ張りますか。 「ところで霊夢」 って、あら? 珍しく霖之助さんから話題振られちゃった。いやいいんだけど、何か珍しいわね。 というかなんか歯切れ悪そうにしてるし、霖之助さんいっつもスパスパ歯に衣を着せないのに。 「どうかしたの?」 「うん、いや、シン君のことなんだが………彼は、その、少々、というか大分、色恋沙汰に関して鈍いんじゃないかと思うんだが」 …………ああ、うん。そりゃ歯切れも悪くなるわ。聞きにくい話題だったらありゃしない。 というか私に聞かれても。私そんなに恋愛沙汰が百戦錬磨に見えるのかしら霖之助さんったら、失礼ったらありゃしない。 「この間も魔理沙から「シン、す………」と言われて魔理沙が逃亡した後もしきりに何が言いたかったんだろうと首をかしげていたぐらいだし、君はどう思う?」 しかし……鈍い、かぁ。鈍い、ねえ。いやー、それに関して霖之助さんに言われたくは………いやいや。 ま、とはいえ霖之助さんの言うことも最もよね、あれは鈍いとか鈍くないとか、そういう問題じゃないというか。 というか魔理沙の態度で気付くでしょうに普通。 「まー鈍いんじゃない? どっかの古道具屋の店主ぐらいには」 「どうしてそこで僕を引き合いに出すんだか………いや、まあいい。正味な話、女の子から「す」で言葉が止まったのなら続く言葉なんて分かるものだろうに」 ……………………………ふぅ、ん。 「ねえ霖之助さん?」 「ん?」 「す」 妙な間があって、一つ頷くと霖之助さんはごそごそと棚の中から何かを探し出して。 「はい、酢」 「わあありがとう超助かるわー」 「そう言いつつ封魔針を構えている理由を述べるんだ!」 えーなんのことー? 私さっぱり分かんなーい。 「まったくもう。お昼から紅魔館に行かなくちゃいけないのに、無駄な体力使わせないでよね」 「本当に無駄以外の何物でもないだろうに………しかし、紅魔館にかい?」 「そ。どっかのバカリスマがアホな勘違いしてる気がするから、それを訂正しに」 してやる義務はないんだけど、こういうところで恩は売りつけないとね。 そうしておけば後々いい感じに利用できそうだし。 「まったく、本当に逞しいね君は」 「ありがとうとは言っておくわ」 呆れられちゃったかしら、溜め息つかれちゃった。 「………君も、魔理沙みたいに恋の一つでもしたらいいんじゃないかい」 「あら残念、相手がいないわ」 「いるじゃないか」 え? いや、まあそりゃあいないことも………っていうか、え、っと? 「シン君が」 ―――――――――あはー。 「うぇーい、遊びに来てやったぜこーりん、って、こーりーん!? 何でズタボロなんだ!?」 「い、いや、何故か霊夢から夢想封印をかまされて………」 「ん、霊夢? ああ、じゃあお前が悪いよ、多分お前の自業自得だぜ」 「……………理解しがたい、というか出来ないんだが」 なんか香霖堂の中から聞こえるけど気にしない気にしなーい。 さ、とっとと紅魔館に向かいましょ。 「オラ来てやったわよ何かだしなさい」 「お前その内友達無くすぞ!?」 大丈夫よ、元々大していないし。いなくて不便したこともないしね。しかし……… 「もうほとんど元通りじゃない、確か十日前よね、シンがここで暴れたの」 門も時計塔も立ってたし、中もちょっと通っただけだけど変なところもなかったし。 流石に早すぎやしないかしら? 「暴れたって………まあ大体その通りなんだけど。ま、あの黒黒いなけりゃもっと長引いてたよ、そこだけは感謝してやらないこともないな」 「ふぅん。じゃあもう完全に元通りなわけ?」 「いや、まだ部屋と時計塔の中身が仮組み状態でちょこちょこ出来あがってないとこがある。私の部屋だけ最優先で直させたけど、完全復旧ってなるとあと一週間はかかりそうね」 一週間か、それでも十分早いのよね。 こういう土木作業させるとシン、というかデスティニーは便利ねぇ。 「お前んとこの神社が壊れてもこれで安泰ね」 「あはは、まっさかー。地震でもなければそんなことになるわけないじゃない」 何故だろう、私の勘がどこぞのアホ天人のせいで神社全損と言う不吉な未来を告げてるような気がするわ。 いやいや、気のせい気のせい。そんなことあるわけないわよ。まあもしそんなことが起こったなら。 「生まれてきてごめんなさいって言わせてあげるわ」 「……………巫女が浮かべていい類の表情じゃないわね」 えーなにがー? 私はいつも可愛い超絶美少女巫女博麗霊夢ちゃんよー? ま、そんな分かりきってることは置いといて。 「それよか、あんた血の方は大丈夫なの」 「ああ、そりゃ問題ない。地下の貯蔵庫は無事だったからな」 「それはなにより。里襲われたら面倒臭いったらないもの」 む、なんかクスクス笑ってる、余裕かましちゃってムカつくわねレミリアのくせに。 「里なんか襲わないよ、お前を敵にしてまでやる価値はない」 吸血鬼らしくない言い草ね、まあ評価されてるのは悪い気はしないけど。 「大体、わざわざ吸血鬼を増やしかねない真似なんかするもんか、増やしたって百害あって一利なし、よ」 「そういうもん?」 「そういうもん。まあ、どっかの馬鹿な伯爵はそれを理解してなかったんだが、な」 なんかくつくつ喉の奥で笑ってる。変なツボでも押しちゃったのかしらね。ま、私には関係ないけど。 「まあ、そういうわけだからわざわざ里を襲ったりしないよ」 「ふーん………でも、その内血が足りなくなるんじゃない?」 「もし血が足りないんならしっかり説明して注射器で命に別状がない量を吸い出すさ、直に吸うなんてもってのほかよ。大体いつもはそうしてるだろ?」 「どうだったかしらね。ま、シバキ倒す面倒が無くっていいわ」 そうはいうけど、血の貯蔵がちゃんとあって里を襲うことが無いってことには安心している。流石にレミリア相手するのはキツイ物があるしね。 それにあのメイド長とムラサキモヤシと、えーと、なんだっけ。なんかあと一人いたわよね、幹部っぽいのが。ああそうそう。 あとなんかあの中国っぽいの全員相手にしろって言われたら萃香やら紫やら引っ張り出さないと里に被害が出かねない。 ―――紫、か。何やってんのかしらね、あいつも。ここ一カ月ぐらい連絡が取れないわけだけど。 呼ぼうと結界緩めてもこないから慌てて結界を張り直したのもいい思い出、とは言わないわよ絶対に。 いつもだったらすっ飛んできて、やれたるんでるだの、巫女としての自覚が足りないだのねちねち言う癖にそれもなかったし。 いい加減に私の方からしっかりとした連絡を取るべきなのかもしれない。あいつの思惑通りっぽくて癪だけど、どうにも気にかかるわ。 そりゃあ紫の気まぐれは今に始まったわけじゃないけど、妖怪の山に来た連中のことを無視するとは思えない。 いつもなら無駄に偉そうに私を煽ってくる癖に今回は一言も無し。最近紫が外の人間と一緒にいたのを見たって噂もあるし……… はぁ。めんどくさいったらありゃしないわホントあのムラサキBBAは。まずは白玉楼に手紙でも出してみますか、何か知ってそうだし。 知らないなら知らないでもいいか、その時は紫の家に案内してもらわなきゃ。嫌って言ってもシバキ倒してそうさせる。 ま、要はいつもの通りってことよね。いつもの通り、平和的な解決法。 「何かロクでもないこと考え込んでないかしら?」 「さあねー。それはさておくとして、いい加減本題に入りましょうか」 「本題? 来た理由があるって言いたげね」 私がなんか教えるなんて珍しいんだから感謝しときなさいよ。 「ズバリ。シン・アスカの運命を操れなかった理由について」 「――――ほう?」 お、やっぱり食いついてきた。椅子から身を乗り出しちゃってまあ。 でも、レミリアの気持ちも分からないでもない。自分の能力が通じない、なんて相手がいたらそりゃあいい気分はしないしね。 「ちなみにアンタは何だと思ってる?」 「うー。何と聞かれると………そうだな、運命から干渉されない程度の能力とか?」 「んー、惜しい」 「お、なんか掠ってたみたいね。で、正解は?」 うん、惜しい。外から見て何にも起こっていないってとこは一緒なんだからすごく惜しい。 「そうね、正解は………」 単純な話よね、単純すぎて見落としてしまうぐらいに単純。知ってしまえば「なあんだ」って言いたくなるぐらいのお話。 だけど、一度思い込んでしまうと気付けないような、それぐらい単純な話よ。 「無能力。あいつは私たちみたいな何らかの能力は持ってないのよ」 おーおー、鳩が豆鉄砲喰らった顔しちゃって、すっごい間抜けよ今のあんた。 うん、レミリアの反応も分かる。多分私があんたでも同じ顔はしたと思う。 じゃあなんであんたの能力―――運命を操る程度の能力が通用しなかったのかって話になるわよね。 「レミリア、お茶。無くなっちゃったわ」 「……………え、あ、ああ。咲夜ー、お茶のお代わり持ってきてー」 「はい、ただ今」 うお、なんかメイドが湧いてきた。相変わらず神出鬼没というか。 なんというかあれよね、黒光りする台所のアレを彷彿とさせるというかなんというか。 「なんか咲夜に失礼なこと考えとらせんか?」 「ううん全然? はい、ありがとー」 むぅ、なんか言い返すかと思ったけどなんも無しか。流石にボロクソ言いすぎたかしら、心ん中で謝っとくわ、ごめんねー。 心の中で言っただけだから聞こえるはずもないか、一礼したら何にも言わないで消えるみたいにいなくなっちゃった。 ぺこりと一礼するのが様になってたわね。見習いたいわけじゃないけど、神社で働いてくれないかなー、そうすれば私が楽できるし。 ………いや、やっぱ駄目ね、あの胸はなんかむかつくわ。いやホントはなんでかなんて分かんないんだけどね。 魔理沙よりも平たいんだけど、あの胸には何かあるような気がする、私の直感がそう言っている気がするわ。 「………んで?」 「ん? ああ、相変わらずおいしいわねあんたんとこのお茶。こんだけのために来る価値はあると思う」 「うぇ? あ、ありがとう、じゃなくて! どういうことだ」 どういうことってなにが、なんて聞いて時間を潰してもいいんだけど、流石にちょっと意地が悪いかしら。 そうね、それじゃあ確証も証拠も正解もない、楽しい楽しい答え合わせのお時間と参りましょうか。 「まずは、あいつには私たちみたいななんらかの能力はない。そこまではいいかしら」 「……………ま、いいだろう。オーケー、理解した。あいつには何の能力もない、そうだな?」 そうそう、そうやって理解しないでもちゃんと受け入れてもらわなくちゃ。 少なくともあいつが何の能力ももっていないってのは殆ど確定事項なわけだし。 もしかしたら私の力でも認識できないものなのかもしれないけれど、シンをみている限りその線はほぼ無いと思う。 あったんだとしても、シンがその能力を使えないのならそれは無いのと同じこと。本人も自分に何か能力があるとは思ってないみたいだし。 デスティニーに変身………でいいのかしらね、変身することもデスティニー側の能力、と言うよりは機能。 ぶっちゃけシンじゃなくてもきちんとした手順を踏めば誰であってもデスティニーには変身できる。そのことは私自身が確認している。 そう、あいつに能力はない。とはいえレミリアじゃなくても、ならなんで、って話になるわよね。 「理解した、じゃあ次だ。どうせ確証も証拠も正解もないんだろうが、せめて私の能力が通じなかった根拠ぐらいは言って欲しいものね」 本命ね、極論だけどシンがどんな能力を持っていたって関係ない、自分の能力が通じなかったっていう事実、そっちの方がよっぽど重要。 根拠となるとすごく単純な話、だけど「通じなかった」っていう事実があるせいでレミリアの意識がそっちに集中しちゃってる。 まずはその勘違いを正すところから始めましょうか。 「根拠、なんて言えるもんでもないけどね。レミリア、あんたはシンがどうやって幻想郷に来たかに関しては?」 「あいつの出自? 急に関係ない方に逸れたな………ン、まあいい。確かアリスの人に限りなく近づけた人形に宿る形でこの幻想郷に来たんだったか」 ………そこまで分かっておきながら正解にたどり着けないなんて、やっぱこいつバカリスマ………いやいや、決めつけるのはよくないわ。 何にしても、そこまで分かっているのならあと一歩。ちょっとしたきっかけさえあればこいつもちゃんとたどり着ける簡単な事実。 「そうね、アリスの人形に乗り移った魂。それが今のあいつ。さて、では質問よ」 これが、核心。この質問さえあれば答えに辿りつかないまでも、シンに何があったのか考えを巡らせることが出来る最短の質問。 私は出来の悪い生徒に言って聞かせるみたいに人差し指をぴんと立ててレミリアに一言一言区切るみたいにして、聞いた。 「じゃあ、シンの元の身体は?」 レミリアは私の言葉で一度固まると、眉をすごい勢いでしかめながら目つきを鋭くして口元を押さえた、目線は私の方を向いているけど私を見てるわけじゃない。 多分今はシンに対して運命を操る程度の能力を使ってるんだと思う、ただし今までとは違う使い方で。 少ししてから抑えていた手を離して私をちゃんと見た、でもやっぱりすごい目つきのままなのね。 ―――違うな、真剣な表情って奴よね。私にはここ最近無縁な顔だわ。 「……………そういうこと、か?」 「そういうこと」 簡素に肯定だけする、それだけで十分伝わるはずだから。 単純な話よ、ホント。レミリアの能力が通じなかったんじゃない、通じてはいたの。いたけれど、発動自体がされなかった。 レミリアの能力は運命を操る程度の能力、元から動いていないものやもう動いていないものを操ることはできない。 より正確に言うのなら、もう動いていないものを操るのなら動いていないものを操るつもりで使わなければ操ることはできないということ。 つまり、あいつの運命は一度終わって、アリスの人形に宿ることで再び動き出した。そういう意味で言えば亡霊に近いけど、肉体自体は普通の人間と殆ど変らないはず。 レミリアはそのことを知らなかったんだから普通の、まだ終わったことのない運命を操るつもりで能力を使ったから通じなかったように見えた。 「あいつの………シンの運命は一度終わっていて、終わるようなことがあって、だから私の能力では操れなかった、続いている運命を操るようなやり方………」 回りくどい言い方は、もう止めにしましょう? もっと単純で簡単な言い方があるでしょう。 「―――生きている奴の運命を操るやり方じゃあいつの運命は操ることが出来ない、って、そういうこと、か?」 「ご明答。そうよ、あいつは要するに」 どうして、も、どうやって、も興味なんてない。私に、いえ、もっと言えば幻想郷に害が無いのならどっちでもいいの。 本当に害があるのなら紫は外の人間を入れたりはしない。幻想郷が全てを受け入れると言っても、幻想郷の住人が受け入れるとは限らないもの。 紫がいれている、ってことはそれ即ち害が無いってことと殆ど同意義よ。そして、害が無い奴に対して心を割いてやる必要はないわ。 そいつがここに来た理由がどんなに特異なものなんだとしても私にとってはどうでもいい。 ………ああ、私もレミリアのことは言えないわね。ぐだぐだと回りくどいこと考えちゃって。 つまるところ、単純な話よね。アリスの人形に取りつかないといけない、肉体を失ったあの男は――― 「シン・アスカは、一度死んでいる」 わかりやすい、答えよね? コズミック・イラにて:アンドリュー・バルトフェルトのとある考察 「報告は以上です、クライン議長閣下」 「ご苦労様です、後のことはお任せいたしますわバルトフェルトさん」 はいよ、任されました。餅は餅屋、戦争のことは僕らに任せてくれたまえよ。 いや、あれは戦争なんてモノでもないな、相変わらずのテロリストどもが相手の掃討戦だ。 今回は旧ザラ派、前回は親デュランダル派、今度は………ブルーコスモスの過激派辺りかな? 連合がいないだけマシだぁね。 まったくどいつもこいつも………ラクスが気にいらないのはいいけど、それならそれでもっとプラントに優しくしてくれよ。 核撃ち込もうとするわサイクロプス使おうとするわ………一番酷かったのになると、レクイエムまで使おうとしてたのがいたっけな。 コロニーの回転を止めるだの毒ガスを使うだのがまだ穏便に見えるって、一体どういうことなんだよ。 ナチュラル、というか地球の方でも大分酷いようだしね………とりあえずは、あれかい? プラントを地球に落としてナチュラルを一掃しコーディネイターの理想郷を~なんて何かのギャグで言っているのかい、ああ本気かそうだろうともよ。 これでもまだまともになった方、少しずつ平和になっているだって言うんだから笑えないよ。 本当にどいつもこいつもだ。ブルーコスモス辺りはいいよ、僕らコーディネイターが嫌いで嫌いでしょうがないんだろうから。 人間どうやったって分かりあえない部分ってのはある、一部の過激派はともかくブルーコスモスの言ってることは間違いだと断ぜられるものじゃあない。 だけど、ザラ派にデュランダル派。君らだってコーディネイターだろう? いや、デュランダル派にはナチュラルもいるのかもしれないね、彼に恩義を感じているナチュラルはそう珍しくもないし。 だが、どちらにしてもだ。同胞や恩人を撃って、それでパトリック・ザラ氏やギルバート・デュランダル氏に何を自慢できるって言うんだい? ………いや、胸を張るのだろうね。そうでなくてはテロなどやれない、か。まったく本当に度し難い。 シン・アスカ君の謙虚さが百分の一でもあれば馬鹿げたテロリズムに走ることもないだろうに。 本当に彼は謙虚すぎたぐらいだ、何せザフト兵からテロリスト共の殆どが彼が逆襲しないことに首をかしげているって有様だからね。 僕から言わせてもらうなら何を馬鹿なことをとしか言えない。彼自身は現状平和に向かっているのならその平和を乱そうとはしない。 もし彼が逆襲しようとするのなら、その時は僕ら、というよりラクスが平和を目指さなくなった時だけだろうよ。 もっとも、ラクスはそんなことはしない――――いや、出来ない。そんな風に彼女は出来ていない。 何にしても、彼が逆襲することは現状ではないってことさ、彼の心情はともかく。 ま、どちらにしても逆襲は「ありえない」ことになってしまったんだが、ね。本当に、どうしようかな。 「如何されましたか、バルトフェルトさん?」 と、そんなこと考えてたらラクスから気遣うような声が。しまったな、顔に出ていたか。 ラクスはこういうところは本当に怖い、自分でも気付かないようなことでもあっさりと気付いてくる。 「いえいえ、対策で頭が痛むだけですよ。議長閣下がご心配なさるようなことなどございませぬ」 半分は本心だよ、ラクスにはこういうことで頭を痛めて欲しくはない。 馬鹿馬鹿しい話だ、ラクスが議長になったから、いや正しく言うならテロ同然の行為で議長の椅子を奪ったから今の現状がある。 そうぬかす奴らはどれだけ頭がおめでたいんだろうね。ラクスじゃなくても、誰がなってもこうなっていたのさ、こんなテロばっかりの日常に。 テロまがいの行為に関しては………まあ、正論だとは思う。思うが、どうあってもデスティニープランを通すわけになどはいかなかった。 ラクスの言うように人の自由を奪ってしまうから、ではない。他がどうかは知らないが、少なくとも僕とキラ君には何があろうとあの馬鹿げた計画を通せないわけがある。 まあ、それに関してはいい。ラクスにも言っていないことだからね、僕とキラ君だけの内緒話。 大事なのはラクスが過労で倒れられては困ると言うことだ。放っておくと休みなんて取らずにぶっ続けで執務を行いかねない。 というか、以前やらかした。かろうじて倒れられる前に無理やり休ませたが、そうでなければ会議中に卒倒しかねなかったはず。 ラクスがそういう風にできているということは分かっていたのに気付けなかったのは僕の人生の中でも3本の指に入るぐらいの失態だ。 「それよりも貴女自身の御体をご自愛ください、戦力は替えが効きますが貴女の替えはございませんので」 「自重はしているつもりなのですが………それと、バルトフェルトさん」 「如何しましたかな?」 「替えが効くなど、そのようなことを仰ってはなりません。皆様は一人一人このプラント、ひいては世界のために戦っておられる大切な人々なのですから」 「……………これは、失礼いたしました」 本当に怖いね、ポーズじゃなくてこれを本心―――この表現が正しいのかはわからないけど―――から言ってるんだから。 心酔する連中の気持ちも分かるし、不気味がる連中の気持ちも理解できるよ。含むもの無しにこんな言葉、そうそう言えるもんじゃない。 「しかし、大切ですか。それはキラ・ヤマト准将に対する個人的感情ととっても?」 「いえ、みな等しく大切なのです。無論、キラを失ったことはとても悲しいことですが」 キラ君、か。彼が行方不明になってからそろそろ一ヶ月か。緘口令は布いてはいるけど、いつまで隠し通せるかね。 誘拐にしてはあまりにも痕跡が残っていないし、なんの要求がないのも妙だし………ふむ。 彼の研究………いや、ないな。そういうことには彼は誰よりも目を光らせてる、そんなことをやろうとした連中を非常に悪質な方法で一斉検挙したこともあるぐらいだし。 いやー、ホントあれは………何やったのか知られたら絶対僕の首が飛びかねないな、あそこまで外道なの僕も初めて見た。 大体検挙とは言うけど、実質あれ保護みたいなものだよね。全員涙目になってたし………ハッキングって怖いね、うん。まあそれはともかく、だ。 駄目だね、分からない。やはり今のところはいないもの、死んだものとして考えるほかないか。 無事でいて欲しいが、駄目だろうなと言うのが僕の本音だ。冷たいとは思うが、不確定なことを当てにするわけにもいかないんでね。 そして、もう一人。表向きこそ行方不明だが、実質は戦死してしまった彼。キラ君よりも価値は低いと周囲から思われている彼。 僕にとっては、何よりも欠かすことのできない存在。 「では、シン・アスカは?」 「シン、ですか」 おや意外そうな顔。ま、確かにここでシンの名前を出すのは妙かもしれない。 キラ君やアスラン、それにラクスとも個人的な親交があったみたいだが、一応元々は僕らの敵だったわけだしね。 そういうところをラクスは気にしないということは分かっているが、流石にラクスにも予想の外だったか。 「ええ、シン・アスカ。彼も大切でしたか?」 「それはもちろんですわ、平和のために自らの心と体が傷つくことも厭わずに戦い続けて下さったのですから、尊敬すら覚えます」 このラクスを以てして尊敬と来たか。これも本心だって言うんだからホント………とはいえ、ここまで言うってことは相当だ、滅多なことでは尊敬だなんて言わないからね。 ま、正直彼に関しては周りからの評価が不当すぎるんだよ、ラクスが気にいらない連中は極端に神格化するわクライン派からは露骨に見下されるわ。 こうやって個人的な親交のある親しい人物にだけ認められているぐらいがちょうどいいと思うんだが……… そんなことダコスタ君にいったら「そんなの貴方だけですよ、馬鹿なこと言ってないで仕事してください」って呆れられたっけな。 思い出したら何か腹が立ってきたな、おのれダコスタ君め、タコスケ君と改名させてやろうか。 「ですが、その彼ももう………本当に悲しく、痛ましいことです」 「そうですな。我がザフトにとって非常に大きな損失と言えます」 「バルトフェルトさん、そのような」 「分かっております、分かっておりますとも。ですが、指揮する者としては感情を優先するわけにもいかんのですよ。そこは、理解して頂けますかな?」 不承不承、って感じだけど頷いてくれた。まあここでごねるほど非建設的な考え方はしないか。 でも、ラクスにはああ言ったけど大きな損失に関して個人的な感情が混ざっていないかと言えば答えはノーだ。 僕自身のとっても大事な目的のために必要な存在だったからね、彼の代わりになる存在を見つけ出せるかどうかは微妙なところだ。 見つかる可能性がゼロでない以上探しはするが………どうだろうね。 それと、もう一つ。恐らくは聞くだけ無駄だろうけど、それでも聞かずにはいられないものだ。 「そういえば何か彼に頼み事があると聞きましたが、それはよろしかったので?」 ルナマリアから聞いたことだ、最期の出撃の直前にラクスがシンに何か頼みごとをしていたと。 彼女も僕、というかクライン派のことはすさまじく嫌っているからね、聞きだすのには苦労した。 それでもまあアスランに対する感情よりはマシだろう、アスランとの関係を揶揄した馬鹿な新兵を病院送りにしたのは記憶に新しい。 たまたまその場にいたけど、いやホントすごい剣幕で怒るんだものな。シンが止めなかったらそのまま殴り殺しかねない勢いだった。 まだ彼女の罵声が耳にこびりついている気がするよ、あんなのに媚を売ってた自分を殺してやりたい、か。 仮にも義弟だろうにあんなの呼ばわりとは………ラクスとはちょっと違うけど女って怖いねー。でも気持ちは分からんことも…………いやいや。 まあそのことはいいだろう、ルナマリア自身の問題だしね。僕の言葉にラクスは二、三度目を瞬かせた。多分思い当たる節が無かったんだろう。 「頼みごと、ですか? いえ、特には………いえ、確かにありました。平和のために戦ってくれと、とても恥知らずな頼みを」 「………なるほど。議長殿が気に病むことではないでしょう、平和のために戦うことは彼にとっても本懐だったことでしょうから」 頼み事は無い、か。分かっていたことだ、そんな答えが返ってくるってことぐらい。 人類を導く聖女ラクス・クライン。そんな彼女がするような頼みじゃなかったんだろう、だったらラクスが覚えてるはずもない。 シンに何を頼んだのか、その答えは分からないけど大体の予想は付けられる。 その答えが僕にとって喜ばしいものなのかどうかは………微妙なところだけどね。喜ぶべきじゃないんだろうけど、だけど喜べる部分もある。 本当に微妙だよ、まったく。 「それでは、私はこれで失礼いたします」 「ええ、報告ご苦労様でした。それと」 ん、なんかモジモジしてる。ひょっとして僕のダンディな魅力にやられちゃったのかな? 「………執務が終わってからでよいのですが、コーヒーを淹れて頂けますか? バルトフェルトさんの淹れるコーヒーはとてもよいものですので」 …………………本当に、君って奴は。 「ああ、構わないよ。僕オリジナルの、本物の味ってやつを味わってくれ」 「是非お願いいたします、その時は私もバルトフェルトさんにコーヒーを」 「それは断る」 あれはコーヒーに対する冒涜だからね、断固として拒否させてもらう。 不味いからじゃないよ、本当だよ? だから頬なんて膨らますもんじゃないよ、ラクス。 「…………ふう」 執務室の椅子に腰掛けて思わず息をついてしまった。疲れてるだけだよ、断じて年をとったからじゃないはずだ。 何をするでもなくぼんやりとしていたかったが、時間は待ってはくれない。そんなことはおいしいコーヒー作りには常識のはずなのにね。 あれ、こういう考え方ってやっぱり年をとった証拠………いやいや、まだまだ若いよ僕は。そうだよね、うんそうだと決めた僕ヤングメン。 「アホなこと考えてる場合じゃないな」 とは言っても指揮官としてやるべきことは実はもう殆ど済ませている、だから後は個人的なやるべきことだ。 無線はおろか、有線からも完全にオフラインにしている前時代的な僕の私物の端末を起動させる。パスを入れて、っと………あとは少し待つ、と。 わざわざこんなものを使っているのには当然わけがある、この中に入っている情報は何があっても流出させられない代物だ、念を幾つ入れたって足りないぐらい。 完全に起動したか、ここ最近の一番の懸念事項である動画をもう一度見直す。 そこに映っているのは、二機のMSが戦っているもの。一機はデスティニーだ、当然搭乗者はシンだろう。撮影された時刻と彼の出撃記録から考えてもまず問題ない。 というか、あれをここまで丁寧に動かせる奴なんて彼ぐらいの物だ、それぐらいピーキーな代物だからねデスティニーは。 そしてもう一機。こちらの方が重要なんだが―――― 「インパルス、か」 より正しく言うならデスティニーシルエットに換装した紫色の機体色を持つZGMF-X56S/θ、デスティニーインパルス。 確か四機程開発されたと聞くが、一号機はあの馬鹿なパイロットのおかげでお釈迦、本当にあのおバカは………あの性格が直らないようなら解雇した方がいいかもしれない。 二号機はデータを取れるだけ取って他の機体に食わせ、四号機に至っては開発していたというデータのみ、結局残っていたのは三号機だけ。 その三号機もパイロットの意向で解体されたからもうザフトでは運用されていないはずの物だ。単純に考えるのなら四号機か新たにロールアウトしたものか。 資料でしか見たことのないそれとデスティニーがデブリ帯域で戦っている映像を見ているとまた頭が痛んで来る。 いっそのこと捏造品ならよかったんだけど、信頼が置けるジャーナリストからの物だ、真贋の調査をわざわざするまでもないほど本物。 「どうしたものかね、本当に」 愚痴ったって仕方が無い、まずは分かっていることを整理してみようか。 まず、デスティニーに乗っているのはシン。ラクスから何らかの頼まれごとをされてからテロリストの掃討任務に当たり、その戻りに遭遇した。 まあこれはいいだろう、ほぼ確定事項だし正直シン以外にデスティニーをここまで扱える奴なんていない。 少なくとも。宙返りをしながらサマーソルトを喰らわせそのままの勢いでフラッシュエッジⅡを振るって距離を空けてから逆さまの状態からの回し蹴りでインパルスを蹴飛ばして岩石にぶつける。 格闘戦向けに調整されているような機体ならともかく、万能機であるデスティニーではそんな芸当僕にはとてもじゃないけどできない。 というか、出来る奴いるの? 正直キラ君やアスラン辺りでも微妙なところじゃないのかなあ。 「本当に…………君って奴は」 これで彼の調整は免疫機能だけなんだから本当に何と言っていいのやら。努力と執念だけでエースに上り詰めるなんて、コーディネイターって言葉に喧嘩売ってるようなもんだよ。 ま、だからこそキラ君は――――いや、よそう。今考えることじゃあない。 では次。こちらの方が重要だね、デスティニーインパルス。機体の出自に関してはある程度の予測は立ててある。 順序立てて考えてみれば分かりやすい、まずインパルスである以上ザフトの関係者が関わっていることになる。 インパルスもある程度は量産されているがまだまだ数は少ない、データを誤魔化してちょろまかすことは無理。人力での調査で呆気なくばれる。 つまりこの時点でザフトから持ち出されたものではなく完全に一から生産されたものってことだ。 それに加えてデスティニーシルエットだ。インパルス乗りでもその存在を知らない奴がいるくらいだ、あのシルエットの開発者が関わっている可能性は高いな。 さて、ではインパルスを秘密裏に生産できるほどの資金資源を持ちデスティニーシルエットの開発者を抱き込んだうえでザフトにその存在を悟らせない情報網。 そんな存在はあるか否か。実を言えば、ある。というか僕らもお世話になっていたぐらいの有名どころ。クライン派、だ。 あそこならMS一機作るぐらい簡単にやってのけるし人一人囲むのぐらいあっさりとやれるだろうよ。 行動力や資産以上に、連中は異常とも言えるぐらいに意思が固い、やると決めたのなら絶対にやる。その辺りはラクス以上だとも思う。 だけど、彼らの仕業だと断じるには問題が一つある、それも致命傷クラスの問題だ。 「無いんだよねぇ、動機」 そう、彼らにはシンを襲う理由が無い。もちろんラクスの敵だった、それだけで襲う理由には十分だと言う人もいるかもね。 だけどクライン派は「今」ラクスの敵ならともかくかつてラクスの敵「だった」存在には手を出したことはない。 況や、そのかつての敵がラクスの味方となっているのなら尚のことだ。下手に手なんか出したらそれこそラクスから平和を脅かす存在だと認識されかねない。 結局のところ動機がまったくの不明。それがクライン派を仮想的に出来ない理由だな。 …………ま、警戒はするけどね。連中はラクスのためにやっていることだとのたまうけれど、僕はそんなことこれっぽっちも信じちゃいない。 MSやら戦艦、それも最新鋭の物を法の目を掻い潜って用意する輩をどう信用しろというんだか。何企んでるかなんて分かったもんじゃない。 企みなんて一切無しの、本当に善意でやっているのだとしたらそっちの方がよっぽど気色悪い。 だいたい、ラクスのためラクスのためというけれど。本当にラクスのことを思うのなら。 「――――チッ」 駄目だね、どうにも。彼らを責めたってどうにもならない。確かに舞台を用意したのは奴らだけど、降りることも不可能じゃない舞台だ。 そこで踊ることを決めたのは紛れもなくラクス自身。例えそれしか道が無いんだとしても同じことだ、だってラクスが決めたことなんだから。 ラクスにとってそれ以外の道が無いんだとしても、だ。決めたのならせめて死なないようにサポートしてやるぐらいしかできないじゃないか。 よそう、こんなこと考えても何の意味もない。もっと意義のあることを考えなくてはね。 機体はまあクライン派、かもしれない。今はそんな所でいいだろう、どっちにしてもまだ誰にも公表してないしねこの動画。 当然あのジャーナリストにも公表も噂話にもしないよう口を酸っぱくして言ったし、ラクスにだって言えやしない。 彼のポリシーからは外れてしまい申し訳なくは思うけど、流石にそれで揉めることはなかった。彼も自分が撮影したものの重大性は理解していたらしい。 まあ相手がシンじゃなければ騒いでたんじゃないかなーとは思わなくもないけど。今回ばかりはシンの人柄に助けられた………いや、今度もか? まあいい。
https://w.atwiki.jp/touma/pages/36.html
名前:森近 麻雀歴: 小学校高学年の頃に覚えた程度の雀歴。でも弱いです。 私や私と比べると、きっと一番弱い私は私です。 好きな場: 東南の方がチャンスが多いので好きです。 好きな役: 一気通貫、三色同順、七対子あたりが好きです。役満も好きです。 スタイル: メガネとふんどしです。あとフンドシです。それと褌もあります。 登場時間: 夜中~朝方。上の図のように澄まして登場しますが基本的に直ぐ脱ぎます。 一言: 森近霖之助のくせに一人称は「僕」じゃなく、わざと「私」にしています。 自己顕示欲強くてごめんなさい。あと変態でごめんなさい。 何か(「この変態野郎!」等でも結構です)ありましたらこちらまでお願いします。
https://w.atwiki.jp/jojotoho_row/pages/357.html
『因幡てゐ』 【昼】D-4 香霖堂前 私の永い人生、こうして今思えばひたすらに『逃げ』を極めた臆病な道程だった。 そもそも妖怪兎なんて妖獣の中でも指折りに弱者の部類に入る。弱いものは弱いのだ、しょうがないじゃんか。 それでも私は生を謳歌したいと願った。弱いなりに知恵を蓄えてきた。 妖怪には、幻想郷には、いや『此の世』には不変のルールという奴が空を覆っている。 『強者は弱者を支配しなければならない』という、至極シンプルな不文律が。 例えばこの幻想郷なら真っ先に名が挙がるのは『博麗霊夢』とか『八雲紫』なんかがそうだ。 賛美されるべき強者こそがこの世のバランスを支配できる権限を持ち得、私みたいなヒエラルキーの下の下は目立てば叩かれる矮小な歯車でしかない。 まだ命名決闘法が定められていない不安定だった頃の幻想郷。そこでも私は常に『狩られる側』の妖獣でしかなかった。 調子に乗った妖怪共から逃げて逃げて逃げて逃げて、夜明けの到来を待つことに一生懸命なウサギ。それが私。 永く生きて得た知識は全て自分の保身の為だけに使ってきた。妖怪兎のリーダーを務めていたのもひとえに自分が生き残るため。 そう……『自分のことしか考えない』。この思想は妖怪ならば至極当たり前の考え。妖怪なんて言ってしまえば誰もが身勝手なんだから。 世のバランスというのは実によく出来たもので、私たち弱者はどんなに虐げられようともその存在は決して淘汰されることはない。 弱者が在るから強者は在る。強者が在るから弱者は在る。まさしく歯車だ。上手く噛み合ってるじゃないか。 だけどそんな世界の住人が“助け合って生きている”なんて誰が思う? 少なくとも奴らは私たちをただの踏み台程度にしか考えてない。 そんな底辺での生き方に育まれた故という訳じゃないけど、私は自ずと理解もしていた。……いや、生まれながらに知っていた。 『法』とは比類なき力。人も妖怪も屈するしかない力、つまりは暴力だ。 暴力によって私たちはまさしく赤子のように無力な存在へと変わっていった。 この世の強者と弱者の関係の本質とは『隷属』であることに、人はいつしか気付くもんだ。 私みたいな錆びた考えの底辺者は、所詮は量産可能のただの歯車。絶対不変のシステムを動かすだけの動力に過ぎない。 そんな私が。 痛みや困難から逃げ続けてきた私が。 臆病で、自分が第一だってズルく考えてる卑怯者の私が。 「―――賭けてみよう。ジョセフと、てゐの二人に。僕の命“チップ”全てを」 どうして、同じ弱者である霖之助から、こんな謂われぬ期待を背負わされているんだ? 香霖堂の玄関前。情けなくドアに聞き耳を立てていた私の鼓膜に入り込んできたあの男の台詞が、いやに反響する。 ここまでの成り行きは大体理解出来た。馬鹿げたことに、アイツらはなんとギャンブルによってあの八雲藍に立ち向かっているらしい。 相手見て喧嘩ふっかけてんの? ジョセフやシュトロハイムならともかく、霖之助は九尾のヤバさを知らないわけじゃないでしょ。 言わんこっちゃないじゃない。案の定、ボロクソに負けてる。私、散々警告したよね? 大体、霖之助のアホ野郎はズルいんだよ。 私よりも弱いクセにさ、その“せめて自分にも出来ることだけはやり遂げよう”って『信念』だけは立派。 弾幕ひとつ撃てないクセにさ、命をも捨てる『覚悟』だけは華々しい。 信念? 覚悟?? はぁ~??? なにそれ美味しいの。 随分と似合わない姿勢じゃない。乾坤一徹の勝負なんて時代遅れだよ。この幻想郷には不似合いの概念だ、信念や覚悟なんて言葉は。 もちろん私も例外じゃない。そんな気概はクソ喰らえだ。寿命が縮む。 今日までのらりくらりと生きてきただろうアンタが、一体どうしてそうも能動的になって動いている? 知り合いが死ぬのが嫌か? 私だって嫌だ。 ジョセフの精神に感化されたか? 私だって……アイツには突き動かされている、部分もある。正直。 「あんなチビうさぎに何でそこまで期待してるのかね」 「てゐと君の『二人』にさ。人と妖怪が手を組むってのも中々新鮮で面白いと思うよ。 もっとも半妖の僕が言っても説得力があるのかないのか、って感じだけどね」 勝手なことを言ってくれる。私の気も知らないで……! その『人と妖怪が手を組む』って部分もぶっちゃけ途方もない大穴だらけの『ギャンブル』なんだよ! 人と妖の英雄譚だなんて夢物語さ! 幻想郷の歴史を見てみなよ! 人間は妖怪を畏れ! 妖怪は人間を襲う! 歴史の基盤は結局のところ『争いの歴史』だ! 私が人間と手を組んで異変を解決する? ふざけないでよ。現にアンタら、三人がかりで負けてんじゃん、その妖怪に。 そのうえ相手は幻想郷のシステムを根本から支えるあの八雲の眷属。私と違ってまごう事なき『強者』だ、八雲藍は。 現在の藍に何があってゲームに乗ってるのかは知ったこっちゃないけど、それは曲がりなりにもヤツが選んだ道! 言い換えるなら、八雲の眷属に歯向かうってことは現行の幻想郷システムそのものに喧嘩売るってことだぞ! それをあの霖之助は――― 「―――なんで、私なんかに、託しちゃうんだよ…………っ」 ドアの向こうで誰かが倒れた音が響いた。たぶん、霖之助がやられた音。 瞬間、私の頬に何か冷たいものが伝う。 涙……なんかじゃない。これは『雨』だ。雨が、降ってきた。 思わず空を仰いだ私の視界に、どんよりとした雲が一面に広がっていた。いつの間に天気が悪くなったんだろう。 こんなハリボテ世界にも雨は降るんだな。まるで今の私の心模様だ、この天気は。ははっ。 惨めだ。私は、なんて惨め。 これが神サマの定めた運命だなんて言うなら、私は神サマをひゃっぺん呪ってやる。 運命だ因縁だなんて言葉は、私には無縁。弱者だろうが強者だろうが、妖怪ってもっと自由であるべきだろ……! 私は自由に生きたい……! 私は誰にも縛られたくない……! 私は救われたい……! 私は…………死にたくない……っ! 「ジョセフ……今すぐ賽子を渡せ。それともまた“よからぬコト”でも考えているか?」 「ジョセフお兄さん……」 ―――でも! 弱者には、弱者の意地がある! それはきっと、同じ弱者である霖之助にも理解させるためのもので…… つまりは、霖之助の奴を見返してやりたかったんだ、私は……っ! つくづく馬鹿な行為だって思う。私らしくない、自棄っぱちな行動…… でも、ほんの少しの勇気なら既に受け取った。幸運を呼ぶ福籠……フクロウから。 『オレは中立ダカラヨォ~~、オマエに頑張レとか言ワネェーケドヨォ~~…… モー少しぐらい、自分に素直にナッテモイインジャネーノカナー』 龍の言葉が脳裏で再生される。 このDISCにはどこか、固い決意を感じた。 『よく聞け!邪知暴虐の糞主催者共! 儂は佐渡の、いや、幻想郷の二ッ岩、二ッ岩マミゾウじゃ! 儂はお主たちの負けにこの生命を賭ける!いざ勝負じゃ!』 同時に響く、力強い声。どこかの誰かの、魂の叫び。 この妖怪もきっと、誰かに敗北して、心半ばに散ったひとり。 そして霖之助と同じで、その生命を偶然とはいえ私に賭けてしまったひとり。 本当に、お前ら皆、勝手だよ。 自分勝手に命賭けて、そのくせ後は人任せときた。 ギャンブルで賭けていいのは自分の命までだろ。言っとくが私は、力は本当に弱いぞ。 『お主には悪いことしたかのう。そういえば鈴仙殿も同じ兎の妖獣じゃったか。どうにも儂は妖怪兎と縁があるようじゃ。 でもま、これも一蓮托生じゃろ。力添えなら惜しまんぞい!』 死んだヤツがペラペラ頭の中に語りかけてくんなよマミゾウとやら。てか鈴仙と会ったのかよ。 くそ……益々コレ、負けるわけにはいかなくなったろ。畜生。 分かったよ……この場所に来た時から、本当は最初から覚悟してたんだ。 少し、ビビッてただけだ。臆病で悪かったな、私はこーいう奴なのよ。 そこで見てろ霖之助。今からお前をギャフンと言わせてやる。今どき『ギャフン』だぞ。 ―――だから死ぬな。私も死なない。やるだけはやってみるからさ。 「―――待って。……ちょっと、待ってよ。その勝負」 そして私は自ら足を踏み入れた。 生への渇望……真の意味で『生きること』への執着、その扉の向こう側へ。 人生とは、生とは、欲望だ。 生きるということは、手に入れるということ。 ―――『ギャンブル』なんだ。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ ジョセフ・ジョースターは『この』場面を予想していなかったわけでは、決してない。 彼は因幡てゐの本質を、初めて会った時から何となくではあるが見抜いていた。彼女がひとつの『分岐点』に立ち、迷っていたことを。 臆病だが口だけは達者。意地悪いが気だけは強く。嘘吐きで腹黒だがどこか健気で根っからの悪人ではない。 なるほどと、ジョセフは霖之助が語った言葉に今更ながらも合点がいった。確かに少し、ほんのちょっぴり自分とてゐは似てるかもしれない。 だからこの小さな仲間が俺たちのピンチに駆けつけてくれるかも、などといった都合の良い妄想を今まで考えなかったわけではないのだ。 『まさか本当に現れてくれるとは』 ジョセフの脳裏に過ぎったこの言葉が口にされるよりも早く、彼の思考はここに来て急ピッチで回転を始めた。 もはや後がない藍とのチンチロ一騎打ち勝負最終戦。勝利への道を必死に模索していたこの瞬間に起こった僥倖。 僥倖とはてゐの存在だ。幸福を運んで来たのはてゐであり……いや違う。 てゐそのものの存在がジョセフにとっては『幸福』に他ならない。いま、この時この瞬間にとっては。 「―――待って。……ちょっと、待ってよ。その勝負」 香霖堂の扉をゆっくり開けて突入したてゐの第一声。弱々しくも決意のような灯火を篭らせる彼女の言葉は、すぐに途切れることになる。 まず場を躍動させたのは、いち早く思考を完結させたジョセフの大声。 「てえええええええぇぇぇゐッッッ!!!!! 橙の『リモコン』を奪えぇぇぇぇーーーーーーーッッッ!!!!」 突如自分に向けられた叫びに戸惑う兎と猫の影ふたつ。てゐと橙。 その僅かな隙、同時に動いた人と狐の影ふたつ。ジョセフと藍。 「――――――ッ!!」 藍の顔が歪を示す。ゲーム最終局面にして、初めて予想外の事態が起こってしまったのだから。 まさかジョセフの仲間がここに来て登場するとは露にも思わなかった。だからこそジョセフの思考から一手遅れてしまった。 『ゲームに関係ない第三者の介入』 この事実が何を意味するか。 現時点でそれを理解できているのはジョセフと藍の二名のみ。 「え…………? ぁ、ちょ……っ」 一方のてゐは廻り巡る展開に思考が追いつかない。 当然だ、彼女は今の今まで音と声のみによってゲームを外から傍観してきた身。しかもゲームを傍受していたのは途中からだ。 この場の詳細な流れ、空気をその身に実体験してはいない。 焦るてゐに襲い掛かる暴力は、その殺気を隠そうともしない藍の凶手。 飛び跳ねるようにして椅子から激しく立ち上がり、テーブルに足をかけてそのままジョセフの頭上を飛び越える。 『殺される』―――てゐは本能で感じた。標的は間違いなく自分だ。 (何故なにどうして? なんでワタシ? ちょっと待て。本物の九尾だ。大妖怪で。あの八雲紫の式神。完全に狩人の目。ヤバイ奴だ。 いや何でワタシに来んの。まだ何もしてないじゃん。チンチロはどうした。クソッ やっぱ来なけりゃ良かったこんな場所) 一瞬のうちに様々な思考が目くるめく脳裏に去来する。走馬灯ってこんな感覚なんだろうなぁと馬鹿げた感情が一瞬湧いた。 その呆けの刹那、無防備なてゐの心臓を貫かんとする藍の貫手を、ジョセフが横からド突いた。いかな大妖の突撃といえど、真横からの衝撃には崩れるものだ。 たまらず藍は椅子ごと吹き飛ばされるも、負傷してない左腕の方を地への支えとし、身体を捻って受身を取った。 そしてここまでの流れを身動きも取れずに傍観していた当事者てゐは、今やっと理解することができたのだ。 (橙のリモコン……首輪…………あっ…そ、そっか! 私なら!) 見ればジョセフの首にも藍の首にも、黒い鉄製の輪っかが装着されている。あれこそが件の首輪なのだろう。 そして彼らは現在、その首輪を外すためにゲームに興じているようなものであり、そのリモコンを橙に握られているからこそ迂闊に強行手段を行使できずにいる。 だが第三者であるてゐならば。首輪など嵌められていないてゐならば。 首輪の執行を恐れることなくリモコンを奪うことが出来る。そして即座に藍の首輪のスイッチを押してしまえばいい。 「……橙、悪いねッ! 今だけは大人しくしててくれ!」 考えてみれば実に単純で簡単なことだった。 何故もっと早くに気付かなかったのか。ひとえに自分の精神状態が酷いものだったからに違いない。 てゐは駆けた。この時ばかりは鴉天狗の飛行速に並ぶんじゃないかと自負できるほどの全速。 たいして長くもない足で橙めがけて駆け、大して長くもない腕をその手に持つリモコンまで伸ばす。 DISCで得たドラゴンズ・ドリームを使用すれば藍相手に驚かせるくらいは出来るかもしれないが…… いや、あの能力はどうにも速効性に欠ける。発動から攻撃までへのタイムラグがあるらしいのが難点だ。 やはり強引にもリモコンを奪うしか……! 「橙ッ!! ジョセフのリモコンを押せぇぇぇッッ!!!!」 「―――っ! ぁ、で、でも……藍さま、わたしは……」 「め――――――くッ! 小兎ごときがァァ!!」 床に腰を落としたままの姿勢で藍は叫ぶ。いつもの冷静沈着な一面が嘘のように崩れていた。 そしてそのまま左腕を伸ばし、てゐへと弾幕をすかさず発射。 威力もない、一発だけの弾幕はてゐの命を刈り取ることは出来なかったが、彼女の体を壁まで叩きつけることには成功した。 「あう……ッ!」 「てゐ!!」 ―――失敗。 てゐの腕はリモコンに触れることすら出来ず、激痛を伴う結果のみに終結した。 またとないチャンスを逃してしまった。せっかく燦々たる遊戯からの脱退の機会だったというのに。 いや、てゐのせいではない。彼女からは、何となくジョセフらについてきただけという偶発的様子は感じられなかった。 「その勝負待った」というてゐの言葉からは、どこか決意めいた意志が滲み出てきていた。 ならば彼女には何か意図があってこの勝負に介入してきたのだろう。その決意を邪魔した無粋者は、むしろジョセフ。 わけもわからずいきなり暴力沙汰に巻き込んでしまい、その小柄な体にあわや怪我をさせるところだった。 「オイ大丈夫か!? すまねえ、俺が余計なこと叫んじまったせいで……!」 「………………いや、もうムリ。わたし死んだ」 「元気そうだな。無理はすんな、そこに居ろ」 数時間ぶりに再会した悪戯兎との会話は、状況とは反して惚けたモノから始まった。 二人の地が如実に反映された空気ではあったが、ここからは帯を締め直さなければならない。 「よお藍ねえちゃん。お互いちょっとしたハプニングだったな。 だがこのウサちゃんとは同じ里で暮らす妖怪同士だろ? ここは見逃しちゃくれねーかな」 会話する間にもジョセフは思考を止めることをしなかった。 この時このタイミングで因幡てゐが乱入して来た事実をどう受け止めるか。どうチャンスに変えるか、と。 少なくとも『不幸』ではない。状況は既に最悪だ、そこからの更なる転落など考えたくない。 ならばやはりてゐとはジョセフにとって『幸運』そのもの。そう思いたい一心で藍へと視線を交わした。 「…………巫山戯るな、その兎はお前の仲間だろう。里でも有名な腹黒妖怪を前にむざむざ見逃せるものか」 冷たい顔で青ざめる橙を自身の後ろに隠し、藍は懐から鋭い薙刀を向けながら牙を剥きだす。 哀しきかな、てゐの幻想郷での評判は負のイメージに傾いていた。いまや彼女は完全に敵視されている。 ならばどうする。勇気を出して救援に駆けつけた彼女を追い出すか。それで藍が納得するならばいい。 だが追い出したところでジョセフを待つのは敗色濃厚の賽子勝負再開。事態の好転には繋がりそうもない。 「何の悪戯をしたものか分からん厄介者を放置など論外。気の毒だが今すぐ死んでもらうか、何ならこの『首輪』でも付けるか? ひとつ余っているが」 ディパックから黒光りする鉄輪を脅すようにチラと見せ付けられる。初めに橙に付けられていた首輪だ。 藍からすればほんの冗談。皮肉のような言い回しで挑発しただけに過ぎない台詞。 「そう……その言葉を待ってたよ。その『首輪』……私にもよこしなさいよ」 ――――――だから、惜しげなくてゐがそう返してきた言葉に彼女は思わず目を丸くしてしまった。 「「………………は?」」 マヌケな台詞で返したのはジョセフも同じ。 今、このチビ兎は何と言った? 「ジョセフたちを縛ってるその悪質な首輪……私も着けてやるって言ってんの!」 「…………??」 ジョセフは学校の成績はあまり芳しくなかったが、それでもタチの悪い切れ者と称されるだけは頭の回転が無駄に速い。 そしてそれ以上に八雲藍は怜悧な大妖。聡明さでは幻想郷でも五指に入る部類なのだ。 その手練手管ともいえる二人をして、今てゐが発言した言葉の意味を図りかねていた。 命綱を差し出しに現れた救世主が、何故か綱と共に沼底に飛び込んできた。それ以外に言い様のない言葉だった。 「てゐ……? もしもォ~~し??? お前さん、来てくれたのは嬉しいんだが―――」 ジョセフは。 そう……ジョセフには、てゐが重い足を動かすに至った『勇気』というものを少しばかり履き違えていた。 彼女がこの場所に現れた理由……玉砕覚悟でもなければ、根拠のない特攻を仕掛けたワケでもない。 てゐには確固とした意志があって、 自分なりに考えたやり方があって、 嫌々ながらではあったが、 本当に選びたくもない道ではあったが、 「わ……わた、私と…………っ! いや、私たちと今すぐ『勝負』しろ! や…八雲藍ッ!!」 ―――確かにこの瞬間、因幡てゐという弱者の意地が、生への渇望を示した。 ―――『生きる』ために。『手に入れる』ために。『立ち向かう』ために。ジョセフの『傍に立つ』ために。 ―――暗闇に微かに灯る『光』を目的に、自ら足を踏み入れたのだ。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 勝負。 今、確かに勝負と言った。 弱小妖怪の代表格、妖怪兎の因幡てゐが。 大妖怪に区別される最強格、九尾の八雲藍に対して。 『勝負しろ』と。確かに叫んだ。名指しで、人指し指まで突きつけて。 それがかつての幻想郷……伝統ある『命名決闘法』での遊戯ならば手を叩き、盃を交わしながら「おうやれやれ」と観戦する者も居ただろう。 スペルカードルールとは弱者でも強者に打ち勝てるというルールの下、制定された法だ。 だが言うまでもなく、現在の幻想郷はルールに守られた法治国家ではない。 誰が勝つか誰が負けるか、何が正義で何が悪かも分からない、倒錯した歪みの具現化。 荒され。脅かされ。集団感染する狂気に、ひとりまたひとり侵されていく。 この八雲藍も同じ。 狂気のウイルスに侵された悲劇の殺戮者だ。 因幡てゐを取り巻く『命名決闘法』などという蓑は既に存在しない。彼女を守ってくれるルールなど、今となっては白昼夢。 そんなてゐと藍が何でもアリの死合いの盤上に立ったところで、結果は火を見るより明らかだ。 「勝負、だと? 気でも違ったのか。お前はもう少し利口な考えの出来る妖怪だと思っていたが」 だから藍が『妖怪兎如きに舐められている』と機嫌を損なったのはごく当然だろう。互いの『格』を理解していない身分でもないはずだ。 「かか、勘違いすんな! お前なんかと殺し合うなんて死んでも嫌だよ! 『コイツ』で勝負しようって言ってんのさ!」 腰が引けながらも懐から取り出したてゐの右手には『トランプセット』が握られていた。 てゐとて考え無しにこの場へ乱入したのではない。自身の支給品『ジャンクスタンドDISC』の他にひとつだけ小道具が配布されていることを思い出したのだ。 普通のトランプ。ともすればジャンクDISC以上に使えないハズレ品だと決めつけ、今まで取り出すことすらしなかった支給品。 「私たちとこのカードで撃ち合え。ただし、スペルカードなんかじゃあない。普通の札だ」 てゐは自分の虚弱さを誰より知っている。だからやはり、ルールこそに守ってもらわなければ格上には勝てない。 『遊戯』というものには『ルール』があり、ジョセフたちも今の今までそのルール上にて賽を振り合っていた。 『遊戯』とは『殺し』の対極。まともな殺し合いでは不覚を取るであろうことがわかっているてゐは、遊戯盤で敵の上を行くしかない。 ルール無用のバトルロワイヤルにてルールを作り、身を投じることで隙を突く。 てゐは『ギャンブル』で命を賭けることに勝機を見た。 「……話にならん。何故私がジョセフとの勝負を中断してまでお前との札勝負に臨まねばならない?」 うん。予想通りだ。 てゐは藍のにべもない反論に心中で頷く。 そりゃあそう来る。てゐの持ちかけた提案は全く論理性が無い。 一突きで死に絶えるような雑魚妖怪相手に一体どこの大妖がわざわざ命を賭けたギャンブルなど行う? そんなことはてゐも分かっている。彼女も生きた年月だけは藍など比べ物にならない程だ。長寿の知恵、ここで発揮せねばいつ発揮する。 「私に勝ったら『いーもん』あげるよ。まだまだ長い戦いが待っているアンタにとって、喉から手が出るほど欲しい代物のはずさ」 どこぞの男にも似た意地悪い笑みをニタリと浮かべながら、懐から小物を取り出す。 薬のような液体が入ったガラスの小瓶だった。 「あれ……お前、そりゃ確かシュトロハイムの野郎が持ってた……」 「そ。『ほ・う・ら・い・のクスリ』。当然本物だよ」 蓬莱の薬。 かつて天才薬剤師の八意永琳が世に生み落としてしまった、大罪の象徴。 飲めばひとたび『蓬莱人』……いわゆる不老不死へと変化する薬。 此度の殺し合いにおいては多少なりとも効能がセーブされているにしても、その効果は絶大。 禁忌ゆえに進んで飲む者など、まともな感性をしている者ならほとんど存在しない。それほどに呪われた薬。 「―――蓬莱の薬、だと? キサマがそんなものを……!」 そう。『まともな感性』をしている者なら決して飲もうなどとは思わない薬。 しかしこの九尾は現状まともではなかった。主の為ならばどんな『大罪』ですら犯すこともやむなしと決めた、狂信者。 だからきっと、藍は迷うことなくこの薬を飲む。飲もうと欲するはず。 そこにてゐは目を付けた。交渉ごとで何より大事なのは会話の『主導権』を握ること。 相手の思考・陰謀・策略……そんな見え隠れする意思を紐解く資質が必要だ。 因幡てゐという妖怪は元来、そういった交渉には慣れている。弱者である妖怪兎たちのリーダーを務めている彼女だから率先して談合を行い、時には欺くこともしてきた。 シュトロハイムに蓬莱の薬が支給されていたのは先ほどの情報交換の際に聞いている。交渉の材料としてはこの上ない逸品。 だから藍に吹き飛ばされた後、隙を見て彼のディパックから頂戴させてもらった。 生粋の『詐欺師』だと罵声を浴びてきたのは何もジョセフのみに非ず。因幡てゐもまた、生まれついての『詐欺師』であった。 「この蓬莱の薬を賭けて今すぐ私と『ゲーム』で勝負しろ。じゃなけりゃあコイツは今すぐ私が飲み干してやる」 瓶の蓋に手を掛けながら、堂々と宣言して見せた。 本当のところを言えばこんな厄物、飲みたくないに決まっている。 コレを飲んだ者がどんな末路を辿るのか。いや、きっとどのような末路をも辿ることは出来なくなるのだろう。 てゐの周りには三人の蓬莱人が居る。彼女らの抱える罪や苦しみはとても想像できる世界には無い。 しかし幸運というべきか、今回の殺し合いに限っては蓬莱人といえど『死ねる』らしい。永遠の苦しみなど味わうことはないのだ。 だから『飲める』。いざとなったら自分も飲んでみせる。 それほどの気概を、てゐは死ぬ気で醸し出して見せた。言うまでもなく、藍へとその覚悟を見せ付けるためだ。 「ウサギ風情が随分と上から物を言ってくれる。今すぐに勝負だと? ジョセフとのチンチロはどうなる」 今はジョセフと藍のチンチロ、その最終局面の途中。 てゐが外から傍聴していた限りでは、限りなくジョセフ劣勢の場面だった。 そのゲームを放り出してまで……つまりジョセフへの『トドメ』の機会を逃してまで藍がこの提案を受けるかといえば、希望は薄い。 てゐにとってそこが最も難関。ギャンブルのテーブルに着くまでがまず、この作戦のひとつの鬼門であった。 劣勢のジョセフを救い出す意味も兼ねての、あのタイミングでの乱入。この申し出は何とかして受け入れさせなければ。 「え、と……それはモチロン――――――」 「ナシでしょ! チンチロ勝負はあそこで終了! 終わり! お前はシュトロハイムと霖之助を見事倒せた。そこは認めてやるぜ! 残念ながら俺は『時間切れ』で倒せなかったみてェーだが、チンチロはお前の勝ち。そう言わざるを得ないっつーコトよ!」 言いにくい申し出に淀むてゐの横で、さも自信満々でジョセフは言った。言い切った。断言した。 あのチンチロに時間制限など設けてはいなかったし、藍のチップかジョセフら三人のチップが全て無くなるまでの勝負だと事前に決めたはずだ。 吹けば飛ぶハチャメチャな理屈。よくぞまあこんな戯言をぬけぬけと言い切れたもんだと、てゐは一周回ってジョセフを賞賛した。コイツは大物だ。 「…………橙。この阿呆のリモコンを押―――」 「わーーわーー待て!! お願い待って!!」 ジョセフも冗談で言ったつもりはない。あのままチンチロを続けていたら間違いなく負けていた。 ならばここは死ぬ気で口八丁をこなし、何とかして藍を納得させるしかない。チンチロを再開させれば、打つ手ナシ。全て終わりなのだ。 何もノーカンにしろとは言ってない。既に仲間が二人やられたのは事実であり、その仇討ちは必ず行わなければならない。 (クッソ~~~! なんか俺ってば、こーいう状況ばかり遭遇しない!?) ワムウたちに毒指輪を埋め込まれた時といい、どうしてこう毎度毎度崖っぷちに追い込まれるのか。 しかも今回はてゐの勝負に持っていくまでが厳しいうえに、真の本番はそこから始まる。そのトランプ勝負とやらで負ければ皆仲良く全滅だ。 「……てゐ。いくつか聞こうか」 「……か、カモ~ン」 「先ほどからお前はしきりに“私たち”と勝負しろと言い張ってるな。となれば勝負というのは、私とお前たち“二人”の勝負ということか?」 「え~~~っと…………うん!」 「え゛ッ! そ、そーなの!?」 やや口ごもりつつもてゐはハッキリ笑顔で肯定した。ジョセフはその答えを予想していなかったのか、間抜けな顔で大口を開けてしまう。 「当たり前だろ! アンタ、私一人であの九尾を相手取れって言うの!?」 「そ、そりゃまあ、そうだがよ……」 「だったらウダウダ文句言わずに男らしく腹括れ! ハイ決定! 反論は受け付けないよ!」 実に強引にジョセフの勝負参加が決定してしまった。この男を尻に敷く態度、彼の地に残してきたスージーQを思わせる。 しかしそれはそれで悪い展開ではない。人間を下に見てくるあの妖狐、是非ともこの手で制裁を加えたいとも思っていたところだ。 ―――問題なのは、この女に『多勢』が通用しないことだ。 ジョセフとてゐがコンビになり、藍と新たに勝負するのはいい。 だが先のチンチロでの不覚、忘れるにしては記憶に新しすぎる。 自信満々で三対一を仕掛けたところで返り討ち。もはや数の利など考えない方がいい。 「その蓬莱の薬が本物だという証拠は?」 「さっきお師匠様が直々に調べた……んだけど、残念ながら物的証拠は無い。まさか飲んで確かめるわけにもいかないし。 でも信じてよ。これ本物。私、正直者だから嘘つかないウサ♪」 「凄いな。その言葉を信じるマヌケが幻想郷に居たら見てみたいものだ」 ぶっちゃけ言うと、てゐ自身も本物なのかの区別は付かない。 永遠亭の住民でありながら、蓬莱の薬なんてまずお目にかかれる代物ではない。 だがシュトロハイム曰く、永琳は確かに本物だと鑑定したという。ならば本物なのだろう、たぶん。 そしてもうひとつ。てゐはこの会話の中にもさり気なく『種』を蒔いた。 自分と永琳がこの会場にて、既に『繋がっている』というようなニュアンスの種を。 実際の所、てゐ自身は永琳とはまだ会ってない。シュトロハイムのみが彼女と邂逅を果たしただけだ。 しかしこの種の効果は上手くいけば絶大な牽制になる。あの月の天才『八意永琳』が既に自分たちの仲間として動いていることを相手に錯覚させれば、藍とて易々とは動けないだろう。 更にこれは誰の意図したものでない完全なる偶然だが、藍は先ほど『レストラン・トラサルディー』にて鈴仙と、シュトロハイムに化けたスタンドの二名を襲っている。 参加者にしては妙な違和感があったとはいえ、まさかかのシュトロハイムが偽物だとは思わない藍の脳内では、ある図式が出来上がりつつあった。 すなわち『シュトロハイムと鈴仙が繋がっている以上、そのシュトロハイムの仲間であるジョセフや因幡てゐも鈴仙とは仲間である』という構図だ。 この構図の中にも既に『永遠亭』の住人の名前が二つある。となれば先ほどてゐが蒔いた種にも説得力が加わってくる。 『ジョセフたちの仲間には“八意永琳”“因幡てゐ”“鈴仙・優曇華院・イナバ”らが居る可能性が極めて高い―――!』 永遠亭の奴らは厄介だ。 過去の出来事からも藍はそう判断せざるを得ない。ここに“蓬莱山輝夜”の名前まで加わったらもはや手が付けられない。 他の二名はまだどうとでもなるが“八意永琳”と“蓬莱山輝夜”。この両名を一度に相手にするのは愚策だ。 ただの可能性に過ぎない予測だが、厄介の芽は摘んでおきたい。 (少しずつ……腹の中から喰らうように、慎重に崩していくか) 藍は構築した。 この先、必ず激突するであろう強敵との戦いに備えて。 ―――『月崩し』の策を。 「…………まぁいいだろう。私の腹は決まった。蓬莱の薬が本物なのかという裏は取っておきたいが…… 不本意だがここはお前を信用しよう、妖怪兎」 「え、ホント? さっすが話の分かるおキツネ―――」 「―――ただし『条件』がある。まずひとつ、『勝負内容』は私が決めさせてもらう」 うぐ、とてゐは小さく唸る。 胸中に生まれるは、小さな焦り。勝負内容を相手に決められるというのは言うまでも無く、大きすぎる譲歩。致命傷にすら成りかねない。 「俺は構わないぜ。お前が勝負の内容を決めろ藍」 迷うてゐの小さな肩をポンと叩き、ジョセフが前に出た。 そもそも此度の勝負の提案は、圧倒不利だったジョセフのチンチロ勝負を中断させてまで割り込ませた掛け合い。 ある程度の譲歩は当然。こればかりは利は藍にある。 「勝負ルールは幻想郷に多少なりとも馴染みがあり、かつシンプルで長くならないものが良いな。 となれば―――『ババ抜き』などどうだろうか?」 「……バっ」 「ババ抜きィ~~~??」 意外といえば意外。 あの誰もが経験の一つ二つあるだろうトランプ種目『ババ抜き』。 チンチロにしてもそうだったが、このような大衆遊戯で命を賭けること自体、馬鹿馬鹿しい。 だが藍の目はまたしても真剣そのもの。今度こそジョセフを喰い殺そうと企む狩人の瞳。 「いいじゃん、ババ抜き。私だって札勝負の種目にそこまで精通してるわけじゃなし。シンプルなのは良いね」 率先して合意したのはてゐの方。 彼女もトランプ勝負を持ち出した手前、事前に色々と内容の予想はしていたが……『ババ抜き』は悪くない。 少なくとも技術や経験が重要なファクターを担う他の種目よりも俄然やりやすい。てゐにとっては、“特に”。 (理屈で考えればほぼ100%私が勝てる勝負だ……! なんたって私は『幸運の白兎』だぞ!) てゐが藍に勝っている要素は『運』しかない。 その運の要素によって大きく左右されるババ抜きなら、小細工ナシで勝てる。 勝てる……のだが。 (……でも、コイツ。わざわざ私に対して運勝負なんて、不気味だぞ……! なに企んでのよ……?) 今や手放しで喜べるような状況じゃない。 先のチンチロ勝負でこの妖狐の何を見てきた? 何を見てしまった? 断然有利かと思われたジョセフらに対し、類稀な手腕と先見で圧倒してみせたのは八雲藍の方ではなかったのか。 今度の勝負だって、必ず何かの『意図』があって仕掛けてきたに違いない。 150%の警戒と備えをしなければ、敗北する。喰い殺される。 「……ジョセフ。一緒に勝つわよ、今度は」 一緒に勝つ。 てゐの口から自然に出たその言葉を、てゐ自身、深く咀嚼する。 似合わないな。そうは思いつつも、不思議とコレが悪い気分ではない。 弱者の自分が人間と共に強者である九尾を討ち倒そうだなんて、ちょっと前までなら死んでも言わなかった。 あれもこれも全部霖之助のせいだ、と。 彼女は心の中で彼に舌を出す。 「勝つのは勿論だが……何でわざわざカードで勝負なんて提案したんだ? お前があのままチンチロに参入すればこの狐女ともう少しスマートに勝負できる流れになれたと思うぜ?」 「受けやしないよ、この九尾は。運の要素が強いチンチロでよりによって私と勝負なんて、能無しのやることさ」 もっとも、このババ抜きだってどう転ぶか全く予想がつかない。 チンチロよりも遥かにシンプルで、それこそ完全に運次第で雌雄は決する内容なのだから。 「納得してもらえたか? それならば次の条件だ。 この勝負に私が勝てば蓬莱の薬は当然として、因幡てゐ……お前には私に『協力』してもらおう」 「ひぇ!? 協力!?」 今度はてゐも変な声が出た。 提示された第二の条件。それはてゐの、藍に対する協力要請。 裏を返せば勝負に負けてもてゐだけは殺されることはない、ということにはなる。 しかしこちらも手放しで喜べない。協力する内容については大方想像がつく。 「そうだ。私の手足となり、仲間の月人たちと接触しろ。 奴らの情報を聞きだして来たり、場合によっては『暗殺』の命も視野に入れる」 途端に鳥肌が立ってきた。 ようするにてゐに『スパイ』のような役目を全うしろと言うらしい。 なるほど、藍からしてみればてゐなどの虫ケラを殺すよりは存分に利用した方が遥かに有用。 対永遠亭組を打ち崩すにはまず内壁から壊していけということだ。利口だが、なんと狡猾な手口か。 諜報仕事だけならまだマシだが、あの永琳を暗殺しろなどという命令を下された日には、二度と朝日は拝めそうにない。 「……おい、てゐ。大丈夫か? 体震えてっぞ」 「あ……う……! ダ、ダイジョーブ……ダイジョーブ……」 もっともらしい条件を叩きつけてきた。ジョセフらが負ければ彼ら三人は殺され、てゐはこの女の軍門に下るというわけだ。 蓬莱の薬による身体改造も加わり、この勝負の勝敗によっては藍の得るアドバンテージは果てしなく大きいリターンとなる。 「以上の二つの条件に了承するなら私はお前の勝負、受けてやろう。どうする?」 藍の浮かべる気味の悪い微笑には、大妖特有の自信がありありと見て取れる。 彼女の中ではこんな勝負、既にして勝ったようなものなのだ。てゐ達が勝つにはその驕心に付け入るしかない。 もとより頷くしかない条件。この提案を受け入れなければ先のチンチロ勝負の再開、すなわちジョセフの『敗北』が現実になりかねない。 てゐが勝つにはもう、ジョセフの協力ナシではあり得ない。 「わかった……やろう。やろうよ。私たちの運命を賭けたババ抜き勝負って奴を」 「こちとら願ったり叶ったりのチャンスなんだ。次は叩きのめしてやるぜ、八雲藍」 グッド。 藍はそう一言呟き、首輪を取り出しててゐに放った。 これを装着することで、もう後には引けなくなる。 首に巻いた首輪は『決意』の証明。その重さに、てゐも腹を括る。 自らの命をチップに、今度は自分自身がこの異変を解決する。その最初の第一歩。 幻想郷を救うだとか、そんな大それた正義感ではない。 ただ何も出来ない自分が惨めに思えて悔しかった。 霖之助にギャフンと言わせたかった。 ジョセフのようになりたかった。 自分のことばかりだ。私は何て自分勝手。 でも、それでもいい。妖怪なんてみんな自分勝手なのだから。 私は今日、初めて自分の運命の為に前へと歩き出す。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「てゐはシュトロハイムと霖之助を少し頼む」 ジョセフに任され、私は首輪にやられた霖之助と軍人のオッサンを壁際に運んだ。 霖之助はともかくこの軍人の図体といったら巨大なもので、しかも見た目以上に重い。カラクリ仕掛けという奴らしい。 おかげで相当に苦戦しながら床を擦り回し、やっとの思いで端まで寄せることができた。因みにジョセフは手伝おうともしなかった。 「霖之助……? おーい、こぉりーん」 念のため呼びかけてみたが、その瞳はうっすらこちらを睨みつけている。何か癪だったから頬をぺちぺち叩いてやった。 どうやら神経毒の効果はその身体を麻痺状態にするらしく、死んでるとか気絶してるわけではないらしい。矢毒にも使われるアレだ。 でも、あくまでも『今のところは』だ。もうあと幾許もすれば、生命に影響が出る。 (……それまでに決着つけてやるからな。だからそこで見てろ、アホ面商人) コイツに勝手に託された命のチップ、今から倍に増やして返してやるさ。 こう見えて私はギャンブル強いよ。貴方も知ってるでしょ、私の幸運。 一回だけ。一回だけ舞台の立役者になってやる。 この私が、よりによって人間と協力して半妖の貴方を助けてやるって言ってんの。 首輪をしっかりと締め付ける。これでもう、逃げようもなくなっちゃった。 あはは。笑いすら出てくるよ。でも、一蓮托生って言うじゃん? 私たちが負けたら皆死んじゃうんだろうね。 実を言うとさ、少し……震えてる。 勿論、怖いからってのもあるけど……、それ以上に『燃えてきた』。少し、だけどね。 誰かの為に……いや、本当のところは自分の為かも。 どっちでもいいよ。兎に角、自分の安全しか考えてこなかった私が、こうして貴方たちに託されてることに。 今、本当にやる気になっちゃってるの。燃えてんのよ。姫様あたりに見られたら多分からかわれるでしょうね。 貴方の馬鹿が移ったんだと思うよ。だからさ、 ―――責任とって、最後まで見届けてよ。 「…………ぁ、……て…ぃ…………」 驚くことにその時、霖之助が僅かに声らしきものを漏らした。 確かに意識はあるようだ。よかったよかった。 「……………………?」 なんだ? 霖之助、何かを『見てる』……? 彼の視線からは、どこか意志めいたものを感じた。 何事かと思い霖之助の視線をそっと追ってみると…… 「……橙、か? アイツがどうかしたの?」 確かにコイツの視線の先には『橙』がいた。 その意図なるものがよく分からん。口もパクパクさせてるだけで言葉も出てこないようだ。 何かを伝えようとしているのか……? だがゴメン霖之助。何のことやらさっぱりだぞ。 さっぱりだけどしかし……コイツの意識があるというのは『運が良い』。ナイスだ。 「貴方の言いたいこと、今はわからないけど……でもこっそり聞いて。 『トン一回で左。トン二回で右』……だ。“その時”になったら死ぬ気で指動かせ。貴方の指示通り動くから。 私の言いたいこと、わかるよね?」 私の伝えるべきことはこれで終わり。後はもう、真剣勝負だ。あまりコソコソやってると藍に怪しまれる。 んじゃ、行ってくるよ霖之助。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ ジョセフはチラと時計を見る。現在10時7分。 迫る第二回放送時刻。それまでにはこの勝負も終結させたい。 行儀悪くドスンと椅子に腰を落とし、卓上の椀と賽子を親の仇のように睨み付ける。 ――――――負けた。完膚なきまでに、敗北した。 心に積もりゆくは、崩されたプライドの瓦礫。 仲間を伴って挑んだチンチロ勝負は結果こそ途中終了の形ではあったものの、実質的にはジョセフの大敗だ。 てゐの機転が無ければあのまま全滅していた。皆の命を預かった身にして、敗けたのだ。 残ったチップをギリリと握る。託された意志だ。このまま敗けたんじゃあ、あまりにも無念ではないか。 「―――理解し難いな」 てゐから渡されたトランプを一枚一枚改めながら、藍は言った。 かの聡慧にも知り得ない事があるのか。女の言葉の意味を計りかねるジョセフに藍は紡ぐ。 「何故、お前はしがみつく? 奇跡でも見出そうとしてるのか? 巡らないチャンスを願っているのか? その朧気で鈍った意志をかろうじて保ち、何故また私を睨みつけられる? 先のチンチロ勝負は中断でも引き分けでもない。お前の『負け』だった。それを理解出来ないお前ではないだろう?」 その通りだ。 自分ひとりではコイツに『勝てやしない』。それを骨の髄まで理解させられた。 遊戯種目が変わったところで、その事実は忘れようのない真実。 奇跡など幻想。チャンスなど待っても来ない。 如何にしてこの最強の妖怪に勝てばいい? ジョセフはその答えに到達出来ずにいる。 わかるのはただひとつの真実。 「……俺が諦めりゃあ橙はこの先、一生笑うことも出来ねえ。皆の意志だって嘘になっちまう。それだけだぜ」 「詐欺師のような男がいっぱしの粋を語る。そのギラついた瞳…………目障りだよ」 藍の金色の瞳に燻るは、深淵。 輝きを失った色の中にかつての八雲藍は無く、今や心の迷宮を彷徨う怪物。 怪物だ、この女は。 「……トランプに妙な細工も無いな。いいだろう、このままコイツを使わせてもらおう。 橙。この中からジョーカーを抜き取り、シャッフルしろ。中立のお前がやるのだ」 「ジョーカーを……? おい、ババ抜きやるのに何でジョーカーを抜くんだ?」 「少しルールに興でも持たせた方が盛り上がりはあるだろう。変則ババ抜きだ。 ババ抜きとはご存知、互いに札を取っていき最後にジョーカーが残ってしまった者が負ける遊戯。 今回の場合ジョーカーは最初から抜いておき、ババの代わりとなるカードは“ランダム”で決定される。 そのカードはゲーム終了まで確認不可とする。つまり、どのカードがババなのか分からないババ抜きだ」 「は? それってつまり…………」 ババ抜きではなく、正確には一般で言うところの『ジジ抜き』。 “何が抜かれたかわからない”状態でするババ抜きであり、こうなると終盤近くに成らないと警戒が出来ない。 「シャッフルは出来たか橙?」 「で、出来ました藍さま」 「ならば私とジョセフで一回ずつカットする。好きな場所をどうぞ」 言われるままにジョセフはデッキをカットし、続いて藍もカット。 「よし。橙、一番上のカードを一枚抜き、それを誰にも見せずにしまっておけ」 「…………は、はい」 幼い手が一枚のカードを抜き取り、この瞬間『ジジ』が決定した。 本来四枚ずつあるはずの数字札が三枚に減り、ジジに限っては最後に必ず一枚残ってゲームが終了する。 決して手札に残してはならない、負のカード。これこそがジジ抜きである。 「ババ抜きは結構やるけどジジ抜きは殆どやったことねーんだよな~。あ、橙。抜き取ったジョーカーと外箱は俺が預かっとくぜ」 「……ルールを確認しよう。左回りに手札を取り合い『ペア』のカードが揃えば場に捨て、最後に残った『ジジ』を持っていた者の負けとする。 負けた者は即首輪発動。お前らが勝てば首輪の鍵と解毒剤をくれてやる。この二つは橙に預けておく。ごくシンプルなルールだ」 「慣れねえサイコロ勝負より、やっぱカードの方が断然やりやすいぜ俺はよォ~。てゐちんはどう?」 「私もいいよそれで。もう、行くとこまで行っちゃおう」 霖之助たちを壁際に寝かせ、傍でルールを聞いていたてゐも着席する。 その首には、命を縛る首輪がしっかりとその存在を主張していた。 「てゐ……ジョセフお兄さん……! わたし―――!」 「何度も言わせるな橙。今のお前は中立の立場だぞ。 お前は黙って『やるべきことをやればいい』。いいな?」 「…………は、い」 説き伏せるような重圧を受け、橙は頷いた。 その様子をてゐは深く―――深く、観察する。 「それでは始めようか。橙、カードを一枚ずつ全員に配れ。 ―――正真正銘、これが最終遊戯“ラストゲーム”だ」 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ その②へ⇒白兎巧師よ潮流に躍れ ――『絆』は『相棒』―― ②
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/528.html
【エピローグ】 NO. タイトル 作者 主な登場人物 EP-1 ベルンカステルの07(前編)ベルンカステルの07(後編) ◆cpYAzLvx8. 竜宮レナ EP-2 THE END.60%(前編)THE END.60%(後編) ◆jVERyrq1dU KAS EP-3 星の光はすべて君 ◆irB6rw04uk 森近霖之助 EP-4 SAMURAI DEEPER WAGASHI ◆qwglOGQwIk 日吉若 EP-5 13 ‐ La Mort ◆jU59Fli6bM 武藤遊戯 EP-6 木菟咆哮新たな世界 ◆wC9C3Zbq2k◆OZbjG1JuJM 柊つかさ EP-7 永劫回帰 ◆UlkdrYaL6o 博麗霊夢 EP-8 春です。(前編)春です。(後編) ◆0RbUzIT0To 博麗霊夢、竜宮レナ、KAS、日吉若、武藤遊戯、柊つかさ
https://w.atwiki.jp/saikyousyujinnkou3/pages/2434.html
【作品名】アトランチスの謎 【ジャンル】ゲーム 【名前】ウィン 【属性】人間 【大きさ】青年並 【攻撃力】ボン:スーパーボンの力で上空含め半径7~8m程度を爆発に巻き込む。 ただし、自分はダメージを受けない。 爆発の威力はダイナマイト程度か(1m程度の直撃部分よりは弱め?) 【防御力】スターの力で一撃で人間を殺害する火の玉や石化攻撃を無効にする ただし、ダイナマイトの直撃を食らうと死んでしまう 【素早さ】探検家なので鍛えた人間並。ただし、5~6mくらいの高さのジャンプ可能 靴の力で雲の上に乗ることも出来る 【特殊能力】マイクの力で周囲の相手の動きをとめることが出来る、多分金縛り 拘束時間は数秒だが、タイミングよく叫べば永久に止まり続ける 半魚人やミイラ男、ピラニアやスライムなどに有効 自分の2倍サイズの相手(悪魔っぽい敵)には効かなかった 叫べばすぐに発動(0コンマのラグあり?)。射程は15~16mくらいか。 視界から見えない相手にも効いている模様。他の行動と併用可能 電球の力でボンを投げた瞬間、一瞬だけ暗闇が晴れる 【長所】広範囲の金縛り。スターの力でそこそこの防御力 【短所】ヒゲ親父のような軽やかなジャンプが出来ない。師匠がいっきの人 【戦略】金縛りにし続けて、ボンの直撃 vol.126 272 格無しさん 2020/01/01 12 16 27 米澤先生withプレジャーボート考察、ボートの速度は20km/h程度とする 大きさ、重量的に車の壁から下がる ×わたしwith光武 体当たり負け △森近霖之助 攻撃当たらない剣通らない ○伏見藤矢 船なので魂化しない、突撃勝ち △桐島祥二with52型零式艦上戦闘機 倒されない攻撃当たらない △天人 攻撃当たらない効かない 田中ぷにえ 銃弾対応の距離不明、修正待ち行き ンガ ジカンガエ負け、こいつもっと上では?過去の考察もジカンガエが碌に考慮されてないように思えるので再考察行き △変態仮面 縛られない攻撃当たらない ○アシュラム 突撃勝ち ウィン テンプレ的に金縛りが有効なのは人外だけなのに人間にも効く扱いで考察されてるので再考察行き ○月神雄牙 突撃勝ち ○コーディ 突撃しまくって勝ち ティム 大砲回避の距離不明、修正待ち行き これより下も勝ち越せる 森近霖之助=米澤先生withプレジャーボート>伏見藤矢 9スレ目 622 :格無しさん:2007/11/28(水) 17 11 04 ウィン考察 ○ウォルサム 金縛り勝ち ○芳山和子 金縛り→爆殺勝ち ○死祭イサム 金縛り→爆殺勝ち ○シャルダン 爆殺勝ち ○電王 倒せないが金縛りにはできる ×山登翔 ブラッディインパクト負け ○コーディ 金縛り勝ち ○月神雄牙 金縛り→爆殺勝ち ○スヌーピー 金縛り勝ち ×変態仮面 亀甲縛り負け ×田中ぷにえ 関節技負け ×天人 気功負け 変態仮面>ウィン>スヌーピー
https://w.atwiki.jp/niconicomugen/pages/5209.html
解説 12組のチームが出場する男女タッグトーナメント。 2つのブロックに分かれリーグ戦を行い、各ブロックの上位2チームがそれぞれ決勝戦、3位決定戦に出場する。 なお、12組中11組が主催者が考えた多分いままで無かったであろうタッグとのこと。 出場選手 + ... Aブロック バッドエンド アノニム ナッシュ 紙風 射命丸文 チップ・ザナフ くされ外道 ジル・バレンタイン ジャギ あなたは天使だ アンヘル ヴァニラ・アイス でんこうせっか 星影 ウルヴァリン 肉食系と絶食系 モリガン・アーンスランド 森近霖之助 Bブロッグ お憑かれ 魂魄妖夢 空条承太郎 力技師弟 伊吹萃香 アレックス 遊びじゃない ハヤト 廃赤猫 もう一人の自分持ち ナコルル 遠野志貴 悪の枢軸 琥珀 汚い忍者 最強のぬこ フェリシア ロバート・ガルシア コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sousouwa/pages/419.html
作品一覧 作品一覧(プチ) 関連リンク 作品一覧 タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 猫にまたたびカラスに新聞 21 18kb ほのぼの 橙 文 いいから飲め、飲めばわかる 22 19kb コメディ 萃香 霊夢 美鈴 妖夢メルラン てゐ 輝夜 小悪魔ぱにっく! 22 10kb コメディ 小悪魔 パチュリー 魔理沙 魂魄剣 現世斬 23 20kb バトル 妖夢 妖忌 幽々子 モコリスマスケーネ 改訂版 23 27kb コメディ 慧音 妹紅 Shattered Library 23 11kb バトル 小悪魔 射命丸文 パチュリー きんのわかめ 24 15kb ほのぼの 魔理沙 霊夢 慧音 The life is a read 25 21kb ほのぼの 本読み妖怪 霖之助 魔理沙パチュリー 小悪魔 異形のものは秘封倶楽部を殺すか? 26 21kb ホラー 蓮子 クトゥルフ神話とのクロスオーバー 明日もきっと晴れ 27 38kb ほのぼの 妖夢 幽々子 霊夢 合作 輝夜さんの彗星返し 27 21kb ほのぼの 輝夜 魔理沙 夢子、ハローグッバイ 28 45kb ほのぼのバトル 夢子 神綺咲夜 美鈴 レミリア ムゲンボカン 29 23kb コメディ 夢美 ちゆり 里香 靈夢 魔理沙 SOMA EXTRACT 30 18kb 慧音 永琳 輝夜 妹紅 夢月 幻月 紅魔異法帖 1 31 18kb シリアス 慧音 レミリア 咲夜 美鈴 紅魔異法帖 2 32 19kb バトル 慧音 オリキャラ 妹紅 紅魔異法帖 3 33 15kb バトル 慧音 オリキャラ 幻想遠野郷 33 19kb 旅行記 オリキャラ 慧音 モコリスマスケーネ ~二年目 36 29kb コメディ 慧音 妹紅 斬レ斬レ妖夢 48 28kb バトル 妖夢 明羅 霖之助 やまもおちもいみもなく設定とか無視してただ魔理沙とフランが絡む話が書きたかったので書いた※朱鷺子はただの趣味なので無害です 54 天人Civilization 68 驟雨来たりなば 92 作品一覧(プチ) タイトル 作品集 サイズ ジャンル 主要キャラクター 備考 東方矛盾噺 プチ3 2kb コメディ それぞれの朝 プチ3 6kb ほのぼの メルラン 幽々子 フランドール 哀しいすれ違い プチ3 4kb 魔理沙 アリス パチュリー 風呂場でのこと プチ4 4kb おっぱい プリズムリバー三姉妹 運命チョコ プチ4 5kb ほのぼの フランドール 小悪魔 レミリア 紅の霧雨 プチ4 7kb シリアス フランドール 素晴らしきは三面記事 プチ5 5kb ギャグ 『明日はきっと……あれ? ~another diary~』 プチ5 35kb 黒スト ルナサ 紫 萃香 合作 永遠のペット プチ6 4kb シリアス 鈴仙 ハイパー銀色の脚スペシャル プチ7 4kb ギャグ 神綺 小さな悪魔の悪夢 プチ9 9kb シリアス 小悪魔 パチュリー ある藍の夕暮れ プチ15 おやつ探訪 必死編 プチ15 ゆかりん・ザ・ビッグボイン プチ15 飲むなら飲むな プチ15 関連リンク 新角氏運営サイト『人の消える道』 東方SS合同誌『彩雨草子』参加 小悪魔SS合同誌『小悪魔の尻尾』参加
https://w.atwiki.jp/fantasyvolost/pages/12.html
メンバー一覧 名前をクリックするとメンバーの紹介が見れます。 目下スナイパー募集中だと思う 順番はてけとー Position Name Role K/D(CW) Master NEGI@ Multirole **%(**%) Member 八坂キャノ子 Multirole **%(**%) Member マスマ Assaulter **%(**%) Member 森近霖之助 Assaulter **%(**%) Member 西行寺@幽々子 Assaulter **%(**%) Member 博麗霊夢 Assaulter **%(**%) Member LaylaPrismriver Assaulter **%(**%) Member 大馬鹿者 Assaulter **%(**%) Member ヴォルフレア Assaulter **%(**%) Member ドリ達 Assaulter **%(**%) Member 僕おぱーい永琳 Assaulter **%(**%) Member へたれみりゃ Multirole **%(**%) Member Boku専用 Assaulter **%(**%) Member kurosuke Multirole **%(**%)
https://w.atwiki.jp/cookie_kaisetu/pages/1060.html
[部分編集] 概要 正式名称は「妖夢と鈴仙のホワイトデー」(2018年3月14日)。 オーム(Ω)が企画した作品。幽々子役のもやしがイラスト、編集を担当している。 2017年秋ごろから多く見られるようになっていったリスペクト型クッキー☆のひとつだが、料理パートは実写映像という他には見られない手法も使っている。 [部分編集] + 登場キャラクター 魂魄妖夢」:オーム 鈴仙・優曇華院・イナバ:あらいさん 森近霖之助:Entrance 西行寺幽々子:もやし + 大まかなストーリー [部分編集] ニコニコでの扱い 現在では非表示になってしまっている為、YouTubeの転載動画しか残っていない。 実写パートでは若干の盛り上がりを見せた。 [部分編集] 本スレでの扱い [部分編集] 実況での扱い
https://w.atwiki.jp/cookie_kaisetu/pages/1618.html
[部分編集] 概要 正式名称は「ディスポイラーズ!2~鴉天狗と外の世界の香霖堂~」(2019年8月12日)。 だんだん組によるボイスドラマ。ディスポ☆の続編。 [部分編集] +登場キャラクター 射命丸文:弥生 姫海棠はたて、女子高生A:成田りん 森近霖之助:山本ダン トーヤ:那由多 アラヤ、カップル男:浅沼諒空 二ツ岩マミゾウ、東京のリポーター:杉宮加奈 八雲紫、カップル女、テレビ岩手リポーター:かがみがわとうこ 小笠原道子、女子高生B、テレビ埼玉リポーター:ほりっく* 小笠原良臣、編集者、お化け屋敷支配人、機動隊A:益荒男 アメイジングライフ編集長、機動隊B:海老沢潮 +大まかなストーリー [部分編集] ニコニコでの扱い [部分編集] 本スレでの扱い [部分編集] 実況での扱い